top of page

 はじまりはきっと勘違いだった。

 

 刹那的な「良さ」を積み上げたところで、そこに「感動」は生まれない。

 表現者はもっとその意味を考えるべきだった。

 心臓を鷲掴みにして魂を揺さぶるものが、一体どこから来るのか目を向けるべきだった。

 使命は生み出すことで、消費ではないのだと、作品を通して訴えかけるべきだった。

 

 目指したものは新生。

 再制作ではなく、再構築でもなく、再起動ですらない。

 椛、はたて、そして文。彼女たちの生きた証といま一度むきあうために。

 

 この物語は「華緋碧麗」の墓標になるかもしれない。

 たとえ、そうだとしても世に送ることを切望するからこそ、いまは創作の力に願いを託します。

 

 はじまりはきっと勘違いだった。

 それでも、地に落ちた種が芽吹き、いつか花をつけるが如く、

 創作の力が新たな物語を育む日を信じたい。

 幻想郷という世界が私と「あなた」を結んだように、

 この物語が作者と作者、作者と読者の架け橋となり、いつか誰かの心に風が吹きますように。

 

 いま一度、『風陣計畫』の物語が新生します。

 ABOさんの描く可憐な天狗たちと、同志千来の流麗な書に載せて、

「華緋碧麗」の織りなす物語をお楽しみください。

 

   全霊の祈りと感謝をこめて 二〇一五年八月              璃玖翔莱

(第一巻 あとがきより)

bottom of page